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開発日誌

―リトル・リコレクターのメンバーが、それぞれの目線で開発の様子をお届けします―

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#59 「開発者インタビュー デザイナー編その2」

こんにちは!デザイナーの森です。

今回は前回から引き続きインタビューをお送りします。お相手はアートディレクターの清水さんです。前回とは反対の構図ですね。清水さんは『リトル・リコレクター』の企画の初期構想を考え、個性的な絵のタッチでビジュアルイメージや世界観の軸を作った人物です。その独特な絵柄のルーツについて伺おうと思います。キャラクターデザインの誕生秘話についても深堀りしていきますので、ぜひ最後までご覧ください。


本人の写真

アートディレクター 清水さん

今回インタビューを受ける人。『リトル・リコレクター』のデザイン全般の監修、キャラクターデザイン、キャラクターアニメーション、音楽の監修まで多岐にわたる箇所を担当。

ディレクター三人衆のうちの一人だ!


——今回は清水さんにインタビューしていこうと思います。よろしくお願いします!

はい、よろしくお願いします~

——アートディレクターの清水さんですが、『リトル・リコレクター』では、アートの領域を超えて結構いろんなことをしていますよね。それぞれどのような経緯で始めましたか?

そうですね。元々結構いろいろ興味はある方ではあったのですが、ベースが「絵」なんですよ。他がサブみたいな感じです。

洞窟物語』っていうパソコンでやれるフリーゲームがあるのですが、子供の頃に親から「やってみ」って言われてやらせてもらい、まあこれが面白いんです。ただそれだけじゃなくて、見た目も可愛くて曲もいい感じで、触発されるような感じありました。

一人の作者によって作られていて、「ゲームって一人で作れるんだ」と思ったんですね。「なら俺もできるか」じゃないけど、そういう人がモデルケースとして存在するのであれば、色々手を出したり自分でも作れるんじゃないかと思いました。

とりあえず絵は描けそうな感じがするし、音楽はちょっと作れないけど、まずはプログラムがないと動かないと思い、パソコンを親から譲ってもらって与えられた時にプログラムを書いてみようと思って「ゲーム 作り方」で検索しました。

確かその時に出てきたのが「Java」、「Visual C++」、「Visual Basic」で。Visual Basicは当時事務寄りのデスクトップアプリを作る用途の印象だったので、C++でDirectX(ダイレクトエックス)を使うとどうやらゲームができるらしいと分かりました。

中学生の頃はUnityみたいなワードも聞いたことがなかったので、DirectXをラップして使いやすくしたDXライブラリみたいなやつを触ってみたのがきっかけなんです。

——当時ゲームは完成しました?

プログラムはゲームを作るだけのレベルに到達はしませんでした。ここに至るまでの間に触っては挫折してを繰り返してちょっとずつ進んで、断片的な知識は入ってきていました。

だからプログラマーと喋ってる時に、「こういう事情で負荷が溜まっているのは、ガベージコレクションのタイミングだったりとか、メモリがどう、ステートマシンがどうこう」とか、そういう用語の意味だけわかるみたいな(笑)。プログラムに関しては「何を言ってるかわかるけどしばらく組めてはいない」みたいな状態で落ち着いてますね。

音楽は『洞窟物語』の天谷(あまや)さんはすごい曲が作れる人で、『ピストンコラージュ』という実際にゲーム内で使っている自作の作曲ツールがあるのですが、フリーで使えるみたいなので、耳コピで好きな曲のメロディーを打ち込んで流してみるというのをやっていました。その時もそんなに「曲作れました」みたいなレベルではなく、興味の種を蒔いている状態で、実を結んではいなかったですね。昔のDTMソフトの『Cubase(キューベース)』は学生には高くて手に入らないし。『ピストンコラージュ』はいろんな音源を鳴らせるような気がするのですが、パソコンに詳しくないとちょっと難しいところがありました。

環境が整ったこともあり、ここ3年ぐらいで急にちょっとできるようになりました。音楽理論って、独学は難しいなっていう感じがあったのですが、最近『SoundQuest(サウンドクエスト)』という、単純に音楽理論をまとめてるすごくわかりやすいサイトができました。色々噛み合って最近作れるようになった感じがしますね。

——大学ではどんなことをされていたんですか?

大学は油絵専攻ですね。予備校ではデザイン科志望だったんですが、絵を描く前の試験として油粘土とかケント紙のペーパークラフトとか、自分で好きな形を切って糊付けして組み上げるような立体構成が必要でした。手先が工作的な意味で不器用らしくて、思い描いているものにならないので行き詰まりを感じて、向いているものを探すために油絵科志望へ移動しました。

受験の時は、一次試験のデッサンで「手渡しモチーフ(石と膜)」が出て、それを好きに組み合わせて描くという、発想力を見られるような試験でした。二次試験の油絵の方は、「テントの中を出入りする人を描く」という課題で、アトリエのど真ん中に黄色いテントがポツンとあって、人がウロウロ出入りするのを描くというものでした。僕はずっと素直に、布のたわみやシワを丁寧に描いていました。

大学に入って以降は、あまり油絵は描いてないような…数枚だと思います(笑)。
3年生から版画専攻を選べるようになって、そっちに進みました。版画の方がどちらかというと繊細で、落ち着いて頭を使って考える感じがしました。版画はいい意味で自由度が低いというか、1回彫っちゃったらなかなか変えられないし、彫ってる最中は自分がどんな絵になるかよくわからない、実際に刷って見てようやくわかるというメディアです。そういう「間接性と複数性」という特性を意識されることが多いです。

「間接性」は、制作している最中は実際の仕上がりがどうなるか分からないということです。「複数性」は、1回作ったら何枚も同じものが出来上がるということです。いっぱい刷れば刷るほど希少性が下がって価値が落ちていくから、版画をやっていると「価値とは何か」ということを考えなければならない、そういう機会になるいいメディアだなと思います。

——価値を考え続けていたことがゲーム作りに活かされているんですね。

「人はいつ『やったぜ』という喜び(手応え)を感じるのか」は常に考えていますが、正直それを完璧に設計しきれているかはわからないです。理念を抱くのと、実際に作るのは全然違います。どれだけ作るのが大変かということや、労力を考えて作らないといけないし、「まだこれには面白さが足りてない」ということは分かっても、じゃあ何を足して何を引けばいいのか全然わからない、という感じでした。

最初と比べたらずいぶん良くなったと思うけど、長い間やりすぎて自分自身が仕様に慣れてしまい、本当に面白くできているのかわからなくなってくる(笑)。刺激に飽きてきているから結果的にゲームをだんだん難しくしちゃう傾向とかもあって、それは難しさとしてありますね。

——絵の話に戻りますが、独特の画風のルーツはなんですか?

あのタッチに関しては、フランスの漫画のバンド・デシネと銅版画がルーツです。『リトル・リコレクター』のチーム内ではメビウスの作品をリファレンスとして挙げているんですが、ルーツとしては『闇の国々』っていう作品が適切かもしれません。とても良い作品です。

——いつから線画主体のスタイルになったんですか?

元々、この線画が細かいスタイルだったわけではないんですよ。一時期「厚塗り」でした。
イラストレーターのAoinさんという方がいらして、ニコニコ動画にお絵描きのタイムラプスで絵が出来上がっていく様子がとても面白くて、美しいと思いました。ですが、ガサガサっとしたところからだんだん出来上がっていくというのを真似てしばらくやってたんですが、あまり合わなかったですね。 僕の性格上、ざっくりしたところから書き進めるよりも、すごい細かいところが気になるので、一向に絵が出来上がらないので向いてなかったです。

そんな時に、寺田克也さんというイラストレーターさんの、インタビューされながら絵を描く動画を見て衝撃を受けました。下書きなしでプリンターみたいに上から書いて出来上がるというすごいことが起こっていました。俺はさすがにその境地にはたどり着けていないですが、すごいと思って真似てみて、それが今の絵柄に近い線画スタイルになっています。

バンド・デシネだとか銅版画だとか言うけど、それは後付けで、初期のルーツとしては寺田克也さんのモノマネから始まってるんですよね。そのテイストの他の絵は何かっていうことを調べた時に、大友克洋さんとか、宮崎駿(ナウシカの原作漫画とか)とか、みんなフランスの漫画家「メビウス」に影響を受けているという繋がりを知って広がっていきました。

——どこからインプットを得てますか?

絵のインプットに関しては、現実からインプットしてるかも。普段から脳内デッサンしてます。

——珍しいタイプですね(笑)。

予備校の時についた癖で、当時はかなり絵が苦手な方だったんですよ。その時に言われたことですごく印象に残っているのは、他のみんなが1ミリ、2ミリのズレの差だけど、「君は1センチくらい違う」っていう(笑)。

——ショック……1センチ違うですか。

そう、すぐに形が破綻してしまうタイプで、「とにかく形を頭に叩き込まねば」と思って、道を歩くたびに、「光と影の間の境界線(明暗境界線・稜線)」を目でなぞる、っていう癖がついて。

腕を上げた時に肉が寄ってちょっとここ膨らみがちだよね、みたいな「その物体がどう成立しているか」を普段からよく見てたりするので、そういうのが反映されるとかはあるかなと思います。 あとは、自分が今描きたいと思っていることにまつわる情報を集めるっていうのをやっています。趣味でタロットカードとかを書いてるんですが、「そもそもタロットカードの歴史ってなんだろう」と思い調べたりしています。そうなると結構本が多いですね。ネットに出ない情報があるのがいいですね。AIとかで色々調べ物がしやすくなってますが、最近は一周回って本がいいなと思っています。

音楽に関しては、実際に音と音の対応関係とかを掴むにあたって『音楽ガチ分析チャンネル』というのが結構マニアックな分析をするチャンネルで、癖があって面白いです。

プログラムは「入門」みたいなやつだと、例えばC言語の書き始めに「#include 」っていう謎の言葉を書く時に、あるサイトでは「これはおまじないなので、意味は今のところ考えないで、とりあえず写してください」と書かれていました。このタイプがすごく苦手で、『苦しんで覚えるC言語』というサイトは「苦しんでください」っていう名前の通り、#includeの意味からして、まずもうめっちゃ言うんですが、そっちの方が好きなんですよ。『音楽ガチ分析チャンネル』に関しても曖昧さを残さない感じが割と好きでしたね。

——『リトル・リコレクター』のアニーとトリスタンを作る際に、どんなキャラクターを目指して、どういったものから着想を得て作りましたか?

落書きからちょっと始めてみようと思って描いた時に、「ちっちゃい女の子に対してでっかい荷物ってやっぱりいいよね」というのがあったんですよ。多分俺が脳裏にその時浮かべてたのは、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』に出てくるサポーターのリリとか、モンハンのオトモアイルーの管理してくれるちっちゃいやつとか。「あれっていいよね」となりました。

そいつ単体よりは相棒がいた方がゲーム的にも広がりが出てよかろうという打算がありました。『原神』のパイモンのようなものです。特に深いアイデアがあるわけでもないけど、2人とも脱力して生まれた感じですね。

実はちょっとずつブラッシュアップしています。最初はおさげがアシンメトリーだったんですよ。三つ編みが伸びていますが、最初は片方でした。

——あ、そうなんですか!

そう。当時に『serial experiments lain』を見てたんですよ。主人公の髪がアシンメトリーで、可愛いなと思い片側にしてたのですが、ちょっと問題が生じました。2Dアクションだから右行ったり左行ったりする時に、「単純な反転が効かない」となり、しょうがなくおさげ(両側)にしました。

今思えば、片おさげだったら今みたいな天真爛漫の性格はあまり合わなかったかもしれないです。ちょっとクールで癖のある性格っぽくなるから、結果的に収まるところに収まったような感じがしますね。「なぜおさげが必要か」というと、走ってる間に揺れているものが何か欲しかったんです。動きがないとつまんないかなっていうのでおさげを描きました。


今回は清水さんへのインタビューでした!

元をたどればイラストレーターの寺田克也さんからの影響だったとは驚きです。
どんな要素が混ざり合って今の絵柄が確立されているのかということが知れて面白かったですね。

次回はプログラマー編、寺沼さんが堀内君にインタビューを行うようです。乞うご期待!

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