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開発日誌

―リトル・リコレクターのメンバーが、それぞれの目線で開発の様子をお届けします―

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#63 「“普通に良い”から『リトル・リコレクター』らしい画面へ」

こんにちは。デザイナーの神田です。

今回は、『リトル・リコレクター』の画面づくりを大きく見直したときのお話です。開発を進める中で出てきたのが、

「画面としては成立しているけれど、アートDである清水さんの絵が持っていた独特の雰囲気が少し薄くなっているのでは?」

という問題でした。そこで、デザイナーの清水さんと一緒に現在の画面になるまでの経緯を振り返ってみました。


――そもそも、今回画面をブラッシュアップしようとなったのは、どういうところからだったんでしょう。

清水:
開発が進むにつれて、自分以外の人の手もかなり入るようになっていたんですよね。背景も全部を僕一人で描いているわけではなくて、作業を分担しています。僕が線画を担当して、色塗りを別の人にお願いするといった作り方もしていました。時間的には、その方が並行して進められるので圧倒的に効率がいいんです。

背景については色の方向性までこちらである程度指定していたので、まだ僕の絵柄から大きく離れてはいなかったと思います。一方で、アイテムやインタラクトできるオブジェクトなどは、デザインの段階からほかの人にお願いするものも増えていました。そうすると、少しずつ「一般的なゲームの絵」に近づいていくんですよね。

――プレイ画面とは別に、UIもかなり作り込まれてきましたよね。

清水:
それもあると思います。UIの密度が上がって、かなりしっかりした画面になったことで、逆にアクション中の画面が少しあっさり見えるようになったところもありました。もちろん、単純に置かれているものの量の問題もあります。ただ、それだけではなくて、全体として少し「空気が軽くなった」という感覚がありました。


――そのあたりで僕のところに「ちょっと画面を味付けしてほしい」という話が来たんですよね。

僕としては、それまでの経緯を細かく知らない状態だったので、まずはスクリーンショットをPhotoshopに持っていって、普通に「画面映えする方向」に調整しました。暗いところを締めたり、発光を強くしたり、コントラストを上げたり。最近のインディーゲームでよく見る、パッと見たときに気持ちいい、かなり強い画面ですね。

それで、一度みんなに見てもらったんですが……。

「普通に良い画面」として作成したもの

清水:
「良いけど、これじゃないよね」と(笑)。

――そうなりましたね(笑)。でも、最初からあれを正解にするつもりではなかったんですよね?

清水:
そうですね。いきなり正解を当てにいくよりも、まず一回「普通に良い画面」を作りたかったんです。何もない状態から「もっとこのゲームらしく」と言っても、比較するものがないので考えにくい。

一度ちゃんと良いところまで持っていけば、「ここは良い。でも、この部分は違う」と言えるようになります。

――一度基準を作って、そこからずらしていく。

清水:
そうです。実際、神田さんが作ったものは画面としては良かったんです。ただ、せっかく『リトル・リコレクター』には独特の絵があるのに、それを一般的な見た目にしてしまうのはもったいないなと。そこから、「この作品ならではの色って何だろう?」というところを考え始めました。


――僕は当時、ざっくり「フランスの画家っぽい方向」と呼んでいたんですが(笑)、実際には何を目指していたんでしょう。

清水:
何か特定の作品をそのまま再現したかったわけではないです。一度、自分の絵柄のルーツに戻ってみようと思ったんです。参考にしたのは、バンド・デシネの作品ですね。特にメビウスやフランソワ・スクイテンの作品は、自分の絵を考える上で影響が大きいです。

――独特な色を使いますよね。

清水:
そうですね。現実の自然な色から少し外れているというか。

ただ、僕自身はものすごくたくさんの色を使うタイプではなくて、かなり絞ります。よく使うのが、オレンジから赤の暖色系と、青系ですね。緑や純粋な黄色は、自分ではあまりうまく使えないというのもありますし、暖色と寒色を組み合わせると画面を作りやすい。結局、普段自分が絵を描くときに自然と選んでいる色なんです。

――そこから、ポストプロセスでも画面全体をその色に寄せていった。

清水:
そうですね。完全にほかの色を消すわけではないですが、暗いところと明るいところに色味を持たせて、全体をその方向にまとめています。

調整後ゲーム画面

――あの調整を見たとき、僕は「これだ」と思ったんです。ただ、メビウスやスクイテンにもいろいろな絵があるので、数値的な正解があるわけではないですよね。どうやって正解を決めたんでしょう。

清水:
その二人は、あくまで取っかかりですね。作品を見て、「そういえば自分はこういう色が好きだったな」と思い出すためのものです。その人たちの作品を再現しようとしているわけではありません。

もし最初から最後まで自分一人で絵を描いていたら、自然とこういう色を使っていただろう。今は分業した結果、そうなっていない。だから最後に、そこへ戻しているだけなんです。

――なるほど。新しく味を付けたというより、「本来の味に戻した」という方が近いんですね。

清水:
そうですね。


今回の画面調整は、最初から計画していた制作フローではありませんでした。ただ、振り返ってみると面白い方法だったと思います。

複数人で制作すれば、当然それぞれの作業には少しずつ個性が出ます。すべての工程を一人が細かく監修することは現実的ではありません。そこで最後の仕上げ工程で色や空気感をまとめ、作品全体を一つの方向へ寄せる。『リトル・リコレクター』では、そんな方法で「らしさ」を取り戻すことになりました。

画面そのものを作り替えるのではなく、最後に全体へ一枚フィルターを重ねるように、作品の空気を整えていく。結果的に、今の『リトル・リコレクター』の画面を作る大切な工程になっています。

それでは、また次回の開発日誌でお会いしましょう!

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