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開発日誌

―リトル・リコレクターのメンバーが、それぞれの目線で開発の様子をお届けします―

ストライプ
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#33 「絵を描くときに考えていること 前編」

こんにちは。デザイナーの清水です。

リトル・リコレクターの画風は、私が普段描いている絵の画風に近いものを採用しています。
ゲーム内で動かすにあたっていくつか変更を加えた場所もありますが、背景などは限りなく普段の画風に近いものです(とはいえ、下描きまでは森くんにお願いしているので、あくまで画風だけです)。

特徴的なのはハッチング(線描によって陰影を表現する技法)ですが、ここではラフから清書までの中で私が考えていることや、こうするとやりやすい、と感じていることなどを説明しながら、流れを追っていこうと思います。

ラフ

まずはラフをご覧ください。

大体こんな感じの落書きめいたものから始めることが多いです。

ラフ

キャンバスに対して小さくない? と思われるかもしれませんが、これがやりやすいのです


どのくらいのものをラフと呼称するかは場合によると思いますが、今回はこのくらいの感じです。
アート系の界隈ではエスキースと呼ぶ場合もありますが、ゲーム業界で聞いたことはないですね。

何を考えていたか

今回の日誌で絵柄のお話をするにあたり、ちょっとした描き下ろしイラストを描こうと思っていました。

ある意味どんなものでもよかったのですが、アニーが元気に手を上げているポーズが描きたいな~と思い、であればカバンを掴んで空を飛んでいるときを描こう、と思いました。

どういう目的のイラストなのか決まっている場合は、それに応じて考えていきます。ゲーム内の素材として使うのか、広報目的で使うのか、世界観を見せたいのかキャラクターを見せたいのか、などによって内容は変わってきます。

ラフの大きさについて

大きなサイズで描き始めると、だんだん細部まで描きたくなってしまいがちです。その結果全体的なバランスに目が行きにくくなることがよくあります。
小さなサイズであれば描き込める詳細さにも限度があるので、ラフとしての役割に集中できます。

四角い画面に対する構図感などは曖昧になりがちなので、一枚絵の場合は画面上の配置を整理することから始めたほうがいい場合が多いですが、立ち絵とかであれば小さめサイズのほうが描きやすいですね。

ただ、作業中の各段階で誰かに見せてFBをもらうのであれば、これが渡されてきたら正直困ると思うので、趣味のお絵かき限定テクニックかもしれません。

※FBというのはフィードバックの略語で、他の人(主に上長や先輩等)に見てもらって、もっとこうしてほしいといった要望や修正点をもらうことを指します。

下描き

ラフを描き終えたら大きく拡大して下描きに移ります。

下描き

この時点で結構な部分を決めてしまいます。ちょっと目が怖いな。


ラフの時点では曖昧だった形を決めていきます。
ラフで気になっていた部分があればこのタイミングで修正してしまいます。

陰影などもこの時点である程度付けてしまえば、後の工程が楽になります。

形を取るときに考えていること

ちょっとデッサン的な話になりますが、物の形を取るときに考えていることについて話します。

基本的に私は座標で考えています。「輪郭線を引こう」と考えると、無数の形の中からいい感じの線を引かなければならず、私の脳みそにとっては結構複雑な処理です。
そこで、物体の形状の中で特徴的な座標の位置関係にまず集中します。
すると、こっちの点に対してこっちの点はもう少し上にあったほうがいいな、みたいなことを考えるだけで形の調整ができるようになります。

形を取るとき

座標で考えると形が取りやすくなります


あとはその点をつなぐだけです。

陰影をつけるときに考えていること

次に陰影についてです。

陰影

境界線をまず考えています


私が陰影をつけるときは、まず陰影の境界線を考えています。

輪郭線だけだと立体的な形状が把握しにくいので、下描きの時点で並行して陰影も付けています。

陰影の境界線には大きく2つがあり、一つは落ち影、もう一つは物体の形状に応じて現れてくるものです。
後者を稜線とか言ったりします。狭い界隈の用語なのか、あまり他の人が言っているのを聞いたことがありませんが。

清書

線画の最後の工程として清書をします。

清書

大変だ。


輪郭線は基本的に下描きをなぞるだけです。ハッチングについては、下描きですでにガイドラインを作ってあるので、それに従いながら付けていきます。

ハッチングの方向は物体の形状に沿って付けていきます。ここは感覚によるところが大きいですが、私は紙幣の絵を参考にしています。
(余談ですが、紙幣の絵はエングレービングという技法で描かれた版画です)

このようなハッチングは大変だろうと思われるでしょうが、実際大変です。どうしてこんな画風になってしまったのだろうと思う日もありますが、私はこの感じを愛しているので仕方がありません。

今回は色をつける前提で考えているのであまり線に強弱を付けていませんが、モノトーンで完結させたいときには、線の太さを変えることでさらに陰影に強弱をつけます。
具体的には稜線付近の線を太くすることで反射光のような効果を出すことができますし、奥まったところの線を太くすればAO(アンビエントオクルージョン)のような効果を出すことができます。

ハッチングの端にある点々について

ハッチング

線で表現しきれない部分は点描を行います。


ハッチングの端に点があることに気づいたかと思います。
これは線で表現しきれないハーフトーンを描くときに使っています。

1~4程度の段階があり、物体の形状の滑らかさに応じて何段階まで描くかを決めています。
点は等間隔で並び、数を徐々に減らしていきます。

この画風の由来について

この画風には明確にルーツがあります。
一つは、フランス語で「続き物漫画」を意味する「バンド・デシネ」。広い括りなので人によるのですが、こういった画風のものがいくつかあります。
もう一つは銅版画です。銅版画にはいくつもの技法がありますが、その中でもエングレービングとエッチングでしばしば見られる画風です。

私はこういった細密な絵に強く惹かれていて、線というものに強い魅力を感じています。
細密画、という括りで言うと、ネーデルラント美術の代表的な作家の一人であるヤン・ファン・エイクの絵も魅力的です。『ヘントの祭壇画』や『アルノルフィーニ夫妻像』が有名です。

まとめ

前編は線画までの工程で私が考えていることについてでした。
リトル・リコレクターのアートはおおよそこの感じで作られています。
後編では着彩の工程をお話できればと思います。色選びや塗り方にもこだわりがあるので是非そのお話ができればと思っています。

それではまたお会いしましょう。

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